Devil May Cry
〜伝説の魔剣士と英雄の息子〜


Mission 6
不幸の形







6/





 深夜の桜通りを進む、二つの影。女子寮へと続く道を、彼らは黙々と歩いていた。

 一人はダンテ。彼は切り裂かれたコートを肩に引っ掛けながら、ゆったりとした足取り で歩いている。その五メートルほど後方を、付かず離れずといった距離で歩く小さい影があった。刹那である。エヴァとの顔合わせの後、解散した二人は共に 女子寮住まいであるが故に帰路に就いていたというわけだ。

 と、二人はこうして一緒に帰ってはいるが、いまだに一言も口を利いていなかった。だが、なにも二人の仲が悪いというわけではない。ただダンテには特に話 す話 題がなく、一方の刹那には尋ねてみたいことがあるのだが、きっかけが掴めず尋ねることができないだけなのだ。

 その証拠に、彼女は何度か話しかけようと口を開きかけ、そして思い直したかのように口を噤むことを繰り返している。最初の一言がどうしても言い出せな かったのである。

 さすがにそれを見かねたのか、ダンテは埒が明かないといった様子で話しかけた。

 「何か聞きたいことでもあんのか?」

 「っ!」

 先を越されたことで驚き、刹那の口から小さな声が漏れる。

 「後ろでそんな態度をとられてるとこっちは気になって仕方ねえよ。言いたいことがあるんなら聞くぜ?」

 刹那の方に振り返り、ダンテは薄笑いを浮かべながら言った。

 彼は一緒に歩き始めてからすぐ、刹那の声をかけようとする気配に気が付いていた。だが彼女の問題であることや、自分の方から話しかけるのが少々面倒臭い こともあり、一切声をかけることはなかった。

 だというのに、彼女は何時まで経っても話しかけてこなかった。口を開いては、また閉じることを繰り返すばかり。お喋りが過ぎるのも大概だが、こうも沈黙 が続くのもつまらないことこの上ない。

 二人の間を支配する一種の異様な雰囲気に、さすがのダンテも我慢できなくなっていたのだ。

 ダンテに急かされてようやく決心がついたからだろうか。彼女は目を閉じて一呼吸置き、細々とした声で話し出した。

 「……先生は、私のことをどう思っていますか?」

 「あん?」

 質問の意図が分からず、ダンテは間抜けな声を出した。

 どう思うも何も、刹那に出会ってからまだ一日程度しか経ってないし、会話もほとんどなかったと言えるだろう。それで彼女の印象を訊かれても、すぐに答え られるわけがない。

 質問の意図が分からず怪訝な顔を向けると、彼女は一瞬表情を硬くした。が、すぐにその表情を解いて話を続けた。

 「昨夜あなたは言いましたね。私から魔の匂いがすると。確かにその通りです。私は……人間では、ありません」

 自分が人間ではないことを、存外にあっさりと白状する刹那に、ダンテは疑問に思った。先日の彼女の様子から見て、自分が人間ではないことを頑なに秘密に している ように感じたからだ。

 それが今になって自分の秘密を話したのにはどういう心境の変化があってのことなのか。彼には分からなかった。

 ただ、と彼は思う。それよりも関心があるのは、彼女が何のハーフなのかだ。

 匂いで既に悪魔の血が入ってないことは分かっていた。だが、純粋な人間では決してないことも承知している。悪魔のことしか知らなかった彼にしてみれば、 悪魔以外の異種族の 存在にそれなりの関心があったのである。それに比べれば、彼女の心境の変化など瑣末な問題だった。

 「じゃあお嬢ちゃんは何の血を引いてんだ?悪魔じゃないようだが」

 「…………う、烏族とのハーフです」

 「烏族?」

 聞きなれない単語が出てきたので、それが何なのか尋ねる。

 刹那曰く、烏族とは日本の妖怪の一つに数えられる種族であるという。見た目は人型で、背中には翼が生え、顔は烏そのもの。彼女はその血を半 分受け継いでいるというのだ。

 「――――なるほどね」

 刹那から感じた悪魔以外の人外の気配だったのはそういうわけだったのかと一人納得していると、彼女はその自信のない視線をダンテに向けた。

 「……先生は何とも思わないのですか?」

 「ん、何がだ?」

 本当に何故?といった表情で振り返るダンテに、真面目に取り合っていないと感じた刹那はついカッとなって怒鳴り返す。

 「何がって……私は人間じゃないんですよ!?化け物なんです!それなのにどうして……先生は私を拒絶しないのですか!?」

 先日の手合わせの時、彼女が人間ではないことを知っていながら、ダンテは嫌悪や拒絶の意思を見せなかった。先程もエヴァンジェリンを吸血鬼と知りなが ら、恐れるどころか気さくに話しかけ、あまつさえからかうことを止めず、普通の人間と同じ態度で振る 舞っていた。

 人間とは、自分と違うものを恐れるものだ。否、それは人間に留まらず他の種に言えることだ。

 刹那の里でもそうだった。彼女は烏族の父と人間の母の間に生まれ、ある身体的な特徴を持ったために忌むべきものとして虐げられてきた。その頃の記憶がト ラウマになり、自分は誰もが恐れる化け物だと思い込んで生きてきたのである。

 しかし、目の前の彼を見ていると、今までの自分は何だったのかという気持ちに駆られてしまい、訳が分からなくなった。もしかしたら、彼は自分のことを受 け止めてくれる存 在かもしれないという妄想すら湧いてしまうほどに。

 ――――だが、本能的にアイデンティティの崩壊を予感した彼女にとって、彼の自分に対する振る舞いは決して認められるものではなかった。

 自分は化け物であるが故に人間から忌み嫌われなければならないのだという勝手な思い込みが、彼女を激情に駆り立てていたのだ。

 一方的に熱くなる彼女を横目で確認しながら、ダンテは肩を竦めた。

 「まあ、確かに普通の人間じゃあないな」

 「それが分かっていているなら……」

 ――そう、私は拒絶されなければならない。肯定されるべき存在じゃないんです……――

 自分は化け物、刹那はそう定義して精神の安定を図る。何とも歪な精神構造だが、そのおかげで心が落ち着いていくのが彼女自身にも分かった。

 「けどよ」

 だというのに――――










 「それがどうしたってんだ?」










 ――――彼の言葉の刃が、刹那の心をズタズタに引き裂いた。

 「な……」

 ――この人は今…………何て言った?――

 ダンテの投げやりな一言に、刹那は絶句する他なかった。なにせ彼女がこれまでに抱え込んできた苦悩を、たった一言で全て否定されたようなものなのだ。こ れはたとえ彼女でなくとも、自身の耳を疑いたくもなるだろう。

 「周りの奴らが何と言おうが関係ないだろ。俺は俺、お前はお前だ」

 ダンテは言う。他人が何を言おうと気にしなくて良い。自分を持っていれば生きていけると。

 確かに、彼の言うことは正論なのかもしれない。自分の心を信じて正直に生きられたら、それはどんなに良いものだろうか。

 だが刹那からすれば、それは上辺だけの綺麗事にしか聞こえなかった。自分がどれほど酷い仕打ちを受けてき たのか、この男は自分のことなど何も知らない癖に、と。

 「…………にが……ると……ん…すか」

 「ん?」

 ぼそりと呟いた言葉が思うように聞き取れず、ダンテは怪訝な顔で聞き返す。

 次の瞬間、刹那が今まで心の中に抑え込んできた悲痛な叫びが、口を突いて出ていた。

 「あなたに何が分かるというんですか!私のことなど、何も知らない癖にっ……あなたみたいにお気楽に生きてきた人には分からないでしょう……!私の境遇 を、今まで受けてき た仕打ちも!」

 そう叫ぶ刹那の目から、一筋の涙が零れる。おそらく、彼女は自分が涙していることにも気が付いていないだろう。それほど今の彼女には余裕がなかった。

 一方で、まさか涙まで見せられると思わなかったのだろう。顔には出さなかったものの、ダンテは珍しく狼狽した。女性が涙するのを見たのは、テメンニグル でレ ディが父アーカムの死体――――実際は生きていたが――――を前にして涙ぐんだ時以来である。

 確かに刹那の言うことにも一理ある。不幸の形は人それぞれで、それを理解できるのは同じ痛みを持つ者だけだ。家族のいる者が、家族を失った者の悲しみや 苦悩をどうして理解できようか。差別を受けたことのない者が、差別を受けた者の痛みをどうして理解できるというのか。そう、誰にも理解できるはずがない。

 彼の言葉が綺麗事だと思ったのも、刹那の境遇を鑑みれば仕方のないことだったのである。

 「……まぁ、確かにそうかもな。悪ぃ」

 それを理解したからこそ、ダンテは肩を竦めて同意するしかなかった。

 これで話は終わりとばかりに踵を返し、ダンテは女子寮に続く通りを歩いていく。刹那は怒りを思う存分ぶ つけて息が切れたのか、彼を止めることはしなかった。いや、できなかった。

 「じゃあな」

 そして、刹那を残したままお別れとばかりに左腕を振り、彼は夜の闇に消えていった。

 その場に残された刹那は暫くその場に立ち尽くしていたが、ふと自分が涙を流していることに気が付き、右腕で涙を拭う。自分の情けなさに、涙は留まるとこ ろを知らず、拭っても拭っても零れていった。

 その後のこと、彼女はよく覚えていない。気付けば彼女は駆け足で自分の部屋に戻っており、すぐさまベッドに向かっていた。幸い部屋に真名はいなかった が、着替えもせずにベッドに潜り込む。

 掛け布団を頭まで被りながら、刹那は悔んだ。何故あんなことを言ってしまったのかと。

 確かに彼は自分のことを知らなかったかもしれない。だが、彼はきっと自分のことを慮って言ってくれたのだろう。それがどうだ。自分はただみっともなく喚 き散ら し、彼に八つ当たりをしたのだ。

 きっと呆れられたに違いない。それどころか、もう見放されたかもしれない。なにせ、親切で言った相手に罵声で返されたのだ。その可能性は十分に有り得る だ ろう。

 せっかく彼の真意を聞こうとしていたのに、その 機会はもう二度と訪れないかもしれない。そう考えると、また涙が双眸から溢れてきた。

 ――私は……なんて、愚かだ――

 掛け布団の端を握り締めながら、彼女は声を殺して泣き続けた。











 その翌日、女子寮の管理人室において、ダンテはいまだに眠りこけていた。時間は七時を回り、このまま眠り続ければ遅刻は確実なものになっただろう。

 しかし、これに対して学園長が何の対策もとらないはずがなかった。今度は遅刻しないよう、ある人物に頼み込んでいたのである。

 ――――ピンポーン――――

 管理人室のチャイムを誰かが鳴らす。その音にダンテが反応して瞼を震わせるが、そこまでだった。その後に数回にわたってチャイムが鳴り響くが、今度は瞼 すら動くことは なかった。チャイムの音程度では、彼を起こすことは叶わないらしい。

 一方その頃、管理人室のドアの前には学生服に身を包んだ二人の少女が立っていた。どうやらこの二人がチャイムを鳴らした張本人のようだ。

 「ねえ、もう行っちゃったんじゃないの?」

 隣の子にそう話しかけるのは、亜麻色の長髪を鈴の髪飾りでサイドポニーテールに縛った活発そうな少女、神楽坂明日菜。

 「んー。でもおじいちゃんに起こすよう言われとるしなー」

 少女の言葉に答えるのは、艶やかな黒髪を腰まで伸ばした大和撫子然とした少女、近衛木乃香。名字から分かる通り、学園長の孫に当たる人物である。

 そう、学園長が頼んだ人物は他ならぬ彼女だったのだ。昨日の遅刻からこれからもダンテが遅刻するに違いないと考え、学園長が彼女にそ の役目を任せたのである。

 祖父の贔屓目であることを考慮しても、彼女は成績優秀で品行方正、容姿端麗な模範生だった。そんな彼女ならば、ダンテの目覚まし役を立派に務めあ げると読んでいたのである。

 事実、この日以降彼が遅刻する回数は激減したことにより、学園長は他の先生方に睨まれることがなくなって安堵することになる。

 「それにしたって遅くない?どうせ出ちゃったのよ、きっと」

 早く行かなければ遅刻すると考えた明日菜は、きっとダンテはいないと楽観的に考え、早く自分達も行こうと急かしている。

 彼女の言葉に少し悩んだ木乃香は、ややあってバッグから鍵を取り出した。

 「え?ちょ……」

 そして明日菜が止める間もなく、木乃香はその鍵を鍵穴に差し込み、回した。しかし、鍵が開いた手応えがない。

 不思議に思って木乃香がドアノブに手をかけて回すと、ガチャンと扉が開く。どうやらダンテは鍵をかけていなかったようだ。

 「あれ?開いてるやん」

 あっけらかんと言う木乃香に対し、明日菜は友人のいきなりの行動に突っ込んだ。

 「それよりも!このか、鍵持ってたの!?」

 「おじいちゃんから貰っとったんよ。“どうせ寝とるからどんな手を使ってでも叩き起こせ”って言われとって……」

 「そ、そうなの……」

 学園長の口調を物真似する木乃香に、“どんな手を使ってでも”という言葉に寒気を覚える明日菜。確かに昨日の大遅刻を顧みればそれくらいのことをしなけ れば起きないだろうなと思いながら、彼 女は自分の認 識の甘さから出た先程の発言を反省した。

 ドアを開けた二人はすんなりと管理人室の中に入った。するとすぐ視界に入ったのは、玄関先にあるブーツ。これは昨日彼が履いていたブーツに間違いなく、 まだ部屋に いるらしいことが見て取れた。

 次に廊下の奥を見やると、突き当たりにフローリングの部屋があるのが見えた。間取りは二人の住んでいる部屋と大して変わらないようで、通路右手にバス ルームとトイレがある。間取りに違いがないなら奥の部屋にいるはずと、二人は靴を脱いで部屋に上がった。

 二人が奥へと進んでいくと、広くもないが狭くもない生活居住空間が目に映った。住み始めたばかりなのか殆ど家具を置いておらず、あるのはベッドと小さな チェストだけ。

 そして予想通り、ベッドの上で彼は仰向けになって眠っていた。両手を枕代わりにし、足を組んで器用に寝ており、身じろぎ一つしない。服が昨日と変わって いな いので、着の身着のまま眠ってしまったということが分かる。呑気なもので、二人が入って来たことにも全く気が付いていないらしい。

 「ちょっと、まだ起きてないの?先生としてどうなのよ?」

 「あははは、アスナはアホやなー。だからウチらが起こしに来てるんやえ?」

 「あ、そうか……って今アホって言った!?」

 器用にノリ突っ込みをする明日菜を見て、木乃香は笑った。

 掛け合いもそこそこに、ベッド脇に立った明日菜はダンテの肩を揺すり始めた。

 「ほら、先生!起きなさいよ!」

 明日菜が声をかけてみる。だが、随分と強く揺すったはずなのにダンテは身じろぎ一つもしなかった。さすがに携帯の着信音やチャイムでも起きなかったこと だけはある。

 「ちょっと!起きなさいよー!」

 業を煮やした明日菜は、今度はダンテの胸倉を両手で掴み、持ち前の怪力で首が前後にガクンガクンと揺れるぐらい振り回す。するとようやく効いてきたの か、 彼がゆっくりと瞼を持ち上げた。

 目を開けた彼はまず目の前にいる明日菜を見て、次に後ろに立っている木乃香を見る。そして周りの様子を窺うと、彼は二人に向かって寝起きの第一声を 放った。

 「お前ら……ここで何してんだ?」

 何とも間抜けな質問に、明日菜は溜息を吐く。

 「何って……先生を起こしに来たんですけど」

 そして二人が来た目的――――学園長に頼まれて起こしに来たことを伝えると、ダンテはすぐに身支度を整え始める。さすがに二日続けて遅刻すると、新田先 生 にどんなお叱りを受けるか分からないからだ。二日続けて叱られるほど彼はマゾではない。

 とは言っても、いつも着ているコートは昨夜に駄目になったばかりなので、準備は手提げのバッグを肩に背負って終わり。つまり、寝た時と服装は変わっ てないということだ。

 これに難色を示したのは明日菜で、服くらい着替えたらどうかと指摘してきた。確かに、二日続けて同じ服というのは不潔と見られる可能性があって印象が悪 い。

 だが、彼の着替えはまだ麻帆良に届いておらず、着替えようにも替わりの服がない。それを伝えると、明日菜は渋々ながら了承した。

 準備が整った三人は女子寮を出ると、すぐに駅へ向かった。電車に乗り込んだ彼は、学生の数にまず驚いた。彼は昨日遅刻をしたので、この通学時間帯の電車 に 乗り合わせたことがなかったのである。

 「あんなー、先生。駅降りたらもっと驚くと思うえ」

 その様子を隣で見ていた木乃香が、ほんわかした微笑みをダンテに向けながら言う。その予言じみた発言は、正しくその通りとなる。

 麻帆良学園中央駅に着いた瞬間、乗客が一斉に改札口に向かって動き出す。二人もその流れに乗って走り出したので、彼も少し遅れてついて行くことになっ た。

 改札を抜けた彼が二人の後をついて行きながら周りを見ると、学生の群れが大通りを流れていくのが見えた。路面電車に乗る者がいれば、スケートボードに 乗って路面電車の後ろ に捕まっている者もいる。そして驚くべきことに、その路面電車と同等の速度で疾駆する学生達の姿まであった。

 どこの世界に乗用車やバイクと並走する学生がいるだろうか。否、いるはずがない。

 彼も大概常識とは無縁の非常識な存在ではあるが、これを見ているともう一度常識について考えてみたくなったほどだ。

 その時、彼は覚えのある気配を感じ取った。その気配は三人の後ろを付かず離れずの距離を保ちながらついて来ている。肩越しにチラッと確認すると、 そこには昨夜言い争って別れた刹那がいた。彼女の目元が腫れぼったく、散々泣き腫らしということが分かった。体調も悪いのか、少し覚束ない足取りで走って いる。それでも相当な速さでついて来ているのだが。

 その様子から、昨夜のことが尾を引いているのだろうと彼は確信した。彼があからさまに見つめているのに、刹那は全く気付いた様子がないのだ。どうやら精 神的に相当参っているらしい。

 しかし、今すぐにどうにかする策があるわけでもなく、彼は悩んでしまう。

 もう一度話し合うべきかと考えてみるが、自分が歯に衣着せるような性格でないことは理解している。もう一度話し合った結果、自分の無神経な一言が再び彼 女 を傷つける可能性は否定できない。

 ならばこのまま放置して良いかと言えば、そういうわけにもいかない。女子供には優しいと自負している彼にしてみれば、刹那を追いこむ原因を作っておきな がらそのまま放置するのは自身の沽券に関わるからだ。

 放置は論外。されど都合良く案が思い浮かぶはずもない。思考は堂々巡りになり、正解に辿り着くことはなかった。

 そもそも、彼は元来から物事を深く考えることを好まない性分である。故に今考えても無駄と早々に思考を打ち切り、彼は二人と共に麻帆良学園まで駆けて いった。





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